日本のZ世代の働き方が「二極化」していると言われます。
バリバリ働いてスタートアップを立ち上げたい「ゾス系」と呼ばれる層がいる一方で、約4割が「管理職にはなりたくない」と答えている。出世よりプライベートを大事にしたい。責任が重くなるのは嫌だ。ワークライフバランスを重視したい ― そんな声が9割にのぼるという調査結果もあります。
では、同じZ世代のインドネシアの若者はどうなのか?
日本と同じように「出世なんていらない」と思っているのか? それとも、まったく違う景色を見ているのか?
この疑問を、最近のインドネシア国内の調査やメディア記事をもとに掘り下げてみました。
インドネシアのZ世代は「ハングリー」だけど「ガムシャラ」ではない
インドネシアのZ世代を一言で表すなら、「ハングリーだけどスマート」。
57%が本業の傍らで副業(サイドハッスル)を持ち、TokopediaやShopeeでの転売、TikTok Shopのアフィリエイト、フリーランスのデザインやライティングなど、多様な収入源を自分で開拓しています。
58%がフリーランスに関心を持ち、「会社に縛られたくない」「自分のペースで働きたい」と考えている点は、日本のZ世代と似ています。
しかし、決定的に違うのはその「動機」です。
日本のZ世代の場合、「出世したくない」「責任を負いたくない」という消極的な理由が目立ちます。
インドネシアのZ世代は違います。彼らは「自分のビジネスを持ちたい」「スキルを磨いて市場価値を上げたい」という攻めの姿勢。34%が「魂をすり減らす仕事は給料が高くてもやらない」と答えていますが、それは仕事を避けているのではなく、「意味のある仕事を選びたい」という表現なのです。
「TikTokで日本に憧れて」― FOMO就職の光と影
いま、インドネシアのZ世代の間で「日本で働く」ことがある種のトレンドになっています。火付け役はTikTokやYouTubeのインフルエンサーたち。
日本のコンビニで働く様子、桜の下でお弁当を食べる動画、「月収30万円!」といったサムネイル。こうしたコンテンツを見て、「自分も日本に行きたい!」と思うZ世代が急増しています。
しかし、これがFOMO(Fear of Missing Out=取り残される恐怖)を生んでいます。
実際、高校を卒業したばかりの若者が、日本語N4も持たないまま「早く行きたい」と焦り、悪質な仲介業者に引っかかるケースも報告されています。せっかく日本に来ても、現実とのギャップに耐えられず研修を途中で辞めてしまう人も少なくありません。
「日本で働く」をゴールではなく「通過点」だと理解している若者と、TikTokの切り抜き動画だけで判断してしまう若者。ここにも、インドネシア国内での二極化が起きています。
「25歳でバーンアウト」― 両国の若者が共有する痛み
興味深いのは、日本とインドネシアのZ世代が「まったく違う文脈」から同じ場所にたどり着いていることです。
日本のZ世代は、上の世代の「働きすぎ」を見て育ち、「ああはなりたくない」と感じている。
インドネシアのZ世代は、SNS時代の「常に成果を出し続けなければ」というプレッシャーの中で、3人に1人が25歳になる前にバーンアウトを経験しています(McKinsey 2025)。
アプローチは真逆ですが、どちらも「このままの働き方では持たない」と気づいている。
日本は「Quiet Quitting(静かな退職)」、インドネシアは「Quiet Thriving(静かな充実)」。同じ「静かな」でも、方向性がまったく違うのが面白いところです。日本は「頑張らないことで自分を守る」、インドネシアは「頑張る場所を選び直すことで自分を活かす」。
ではなぜ、インドネシアの若者は「日本」を選ぶのか?
ルピアが史上最安値を更新し、国内で15,000人以上が解雇される中、インドネシア政府は今年30万〜50万人の労働者を海外に送り出す計画を推進しています。
しかし、インドネシアのZ世代が日本を選ぶ理由は、単なる経済的動機だけではありません。
以前ジャカルタで面接した26歳のデヴィさんはこう言いました。
「日本で5年働いてお金を貯めて帰る、なんて考えていません。介護福祉士の資格を取って、いずれ自分で介護事業を起こしたい。日本はそのための学校みたいな場所です」。
日本語学習者71万人(世界第2位)。全寮制5カ月集中教育。技人国ビザのN2要件。これらの数字の裏にあるのは、「日本でキャリアを積みたい」という本気の志です。
受け入れる側の「覚醒」
ここで、日本側の経営者として自問したいことがあります。
インドネシアの若者が「この会社で成長したい」と思って来てくれたとき、私たちはそれに応えられる環境を用意できているでしょうか?
5年後のキャリアパスを聞かれて、ちゃんと答えられるでしょうか?
日本のZ世代が「管理職になりたくない」と言うのは、もしかすると管理職に魅力がないからかもしれません。その同じ組織に、インドネシアから「成長したい」と願う若者が入ってきたとき、もしキャリアパスが描けなければ、彼らも同じように離れていくでしょう。
つまり、外国人材の受入れは「人手不足の穴埋め」ではなく、「組織そのものをアップデートするきっかけ」なのだと思います。
二つのZ世代をつなぐもの
日本のZ世代は「意味のない仕事はしたくない」と言い、インドネシアのZ世代は「意味のある仕事を自分で選びたい」と言う。
表現は違いますが、根っこにあるのは同じ問いです。
「この仕事は、自分の人生にとって意味があるか?」
その問いに誠実に向き合える組織だけが、国籍を問わず、若い世代から選ばれる。私はそう信じています。
StarBoard 代表取締役 矢部将勝