特定技能制度が本格始動してから6年。在留外国人数は39万人を突破し、政府は2028年度末までの受け入れ上限を123万人に引き上げた。外食業では受け入れ枠の5万人に到達し、制度開始以来初の新規受け入れ停止という事態も発生している。外国人材市場は、かつてないスピードで拡大と変容を同時に遂げている。

こうした急拡大の裏側で、私が強く感じているのは、現在の登録支援機関のビジネスモデルが、早ければ数年以内に根本から揺らぐだろうという確信だ。

「紹介+サポート」の2本柱モデル、その構造的限界

現在、多くの登録支援機関は「人材紹介」と「入国後の支援」という2つのキャッシュポイントで事業を成り立たせている。紹介手数料で初期収益を得て、月額のサポート費用で継続収益を積み上げる──このモデルは、外国人材の受け入れが始まったばかりの「黎明期」においては合理的だった。

しかし、2026年現在、登録支援機関の数は全国で1万件を超えている。参入障壁の低さゆえに玉石混交の状態が続き、支援の質にもばらつきが大きい。加えて、2027年4月に施行される育成就労制度では、支援責任者の要件厳格化や監理支援機関への移行など、制度面からの淘汰圧力も強まっている。

つまり、外部環境の変化と制度改革の両面から、「ただ紹介して、ただサポートする」という従来型のビジネスモデルは、すでに賞味期限を迎えつつあるのだ。

AIがマッチングの「中間層」を消し去る日

2026年2月、Bloombergは「AIで採用のマッチング精度向上へ──人材紹介会社に迫る需要縮小の危機」と題した記事を配信した。この記事が指摘するのは、履歴書のスクリーニング、応募者のランキング、初期面接までをAIが自動化することで、企業が外部の人材紹介会社に依存する必要がなくなりつつあるという現実だ。

外国人材の採用においても、この流れは確実に到来する。求職者のスキルセット、語学力、職務経歴、資格情報と、求人企業側の雇用条件、職場環境、求める人物像──これらの構造化されたデータを突き合わせて最適解を導き出すことは、まさにAIが最も得意とする領域だ。

もちろん、最終的に「この人を採用する」という判断を下すのは人間だ。オンライン面接で候補者の表情や受け答えの間合いを感じ取ること、あるいは現地に足を運んで候補者の生活環境や人柄を自分の目で確かめること──こうした「人間にしかできない最終判断」は間違いなく残る。

しかし、その前段階にあるスクリーニング、候補者の絞り込み、条件のすり合わせといった「中間プロセス」は、基本的にAIが担うようになる。これは予測ではなく、すでに始まっている現実だ。Robert HalfやRandstadといったグローバル大手でさえ、AIによるマッチング精度の向上に舵を切っている。

この変化が意味するのは明白だ。「人材を紹介する」という行為そのものの付加価値が、急速に低下していくということである。

「SaaS is Dead」──月額課金モデルの終焉が意味すること

スタートアップ界隈で「SaaS is Dead」というフレーズが広がっている。2026年2月、大和総研のレポートは「なぜ今、SaaSの前提が揺らぐのか」と題し、従来のSaaSモデルの構造的課題を分析した。同月にはAnthropicがClaude CoworkとClaude Codeを発表し、月額数千円のAIサブスクリプションが高額なエンタープライズSaaSの機能を代替しうることを示した。この発表直後、S&P500のソフトウェア指数は13%下落した。

この流れは、登録支援機関の「月額サポート課金モデル」にも直接的な影響を及ぼす。

現在、多くの登録支援機関は、外国人材1人あたり月額2〜3万円のサポート費用を受け入れ企業に請求している。10人の外国人を雇用する企業であれば、年間240〜360万円のコストだ。しかし、この費用に見合うだけの価値を、すべての登録支援機関が提供できているかと問われれば、答えは厳しい。

出入国在留管理庁は2025年4月から定期届出を年1回に統合し、オンライン面談も解禁した。制度の簡素化は、裏を返せば「自社でやれるようにした」というメッセージでもある。実際、支援の内製化に踏み切る企業は増えており、月額課金だけに依存するビジネスモデルは、そのベースが削られ始めている。

内製化の波──「自社のことは自社でやる」時代の到来

私は、今後数年で外国人材のサポートは急速に内製化が進むと考えている。これは希望的観測ではなく、構造的な必然だ。

理由は3つある。

第一に、コスト圧力。外国人採用が加速する中で、人材1人あたり月額2〜3万円の外部委託費を払い続けることは、特に中小企業にとって経営を圧迫する。50人を採用すれば、年間1,200〜1,800万円のサポート費用だ。企業規模の拡大とともに、この金額は無視できないものになる。

第二に、制度の簡素化。定期届出の年1回化、オンライン面談の解禁、報告書式の統合──こうした行政改革は、受け入れ企業が自社で対応できる余地を広げている。

第三に、人材への直接的な責任意識の芽生え。自社で雇用した人材は自社でサポートする。この当たり前の感覚が、外国人材に対してようやく広がり始めている。「外国人だから外部に任せる」という発想自体が、徐々に時代遅れになりつつあるのだ。

それでも「人の目」と「ノウハウ」は消えない

ただし、ここで誤解してほしくないのは、AIの台頭と内製化の進展によって、人材紹介業や登録支援機関がすべて消滅するとは言っていないということだ。

AIがマッチングの精度を飛躍的に高める一方で、最終的な採用判断を下す機能は人間の側に残る。そして、その判断の質を左右するのが、「データに基づく客観的評価」と「人間の直感による主観的評価」の掛け合わせだ。

当社StarBoardでは、独自のスコアマッチングシステムを開発している。候補者のスキルや経験だけでなく、性格特性、ストレス耐性、チームとの相性といった「人材の本質」を見抜く質問に基づいて、企業と人材のマッチングスコアを算出する仕組みだ。

人が主観であれば、データは客観。この2つを組み合わせることで、AIだけでは届かない、そして人間の勘だけでは見落とす、より精度の高い採用が実現する。これは当社が8年間、インドネシア人材と向き合い続ける中で到達した確信だ。

ノウハウのシステム化──「初めて」の企業を救う仕組み

サポートの内製化が進むと言ったが、ここにはひとつ大きな壁がある。ノウハウだ。

外国人材のサポートは、在留資格の管理、生活面での相談対応、文化的な摩擦の解消、メンタルヘルスのケア、行政手続きの支援など、多岐にわたる。これらのノウハウは一朝一夕には身につかない。

当社は8年間にわたってインドネシア人材のサポートを続けてきた。この中で蓄積された「インドネシア人材に特化したノウハウ」──文化的背景を踏まえたコミュニケーション方法、宗教的配慮の具体策、ホームシックへの対処法、日本の生活ルールの効果的な伝え方──これらは、AIだけでは代替できない「経験知」だ。

この経験知を、当社独自のシステムの中に組み込む。そうすることで、初めてインドネシア人を雇用する企業でも、あるいは初めて外国人材のサポートを自社で行う企業でも、一定以上の品質でサポートを実施できるようになる。

内製化の時代に問われるのは、「支援を代行する力」ではなく、「支援の仕組みを提供する力」だ。インドネシア政府が今後5年間で25万人の特定技能人材を日本に送り出す目標を掲げる中、2025年末時点でインドネシア人は特定技能在留者全体の約20.7%を占め、ベトナムに次ぐ第2位となっている。この数字は今後さらに伸びるだろう。急増するインドネシア人材を受け入れる企業が直面する「ノウハウの壁」を、テクノロジーと経験知の融合で乗り越える──それが、これからの外国人材ビジネスに求められる本質的な価値だと考えている。

変化を恐れるか、変化を設計するか

2026年は、外国人材ビジネスにとって転換点の年だ。

外食業の受け入れ停止は、市場が「量の拡大」から「質の選別」フェーズに入ったことを象徴している。2027年4月の育成就労制度施行は、30年続いた技能実習制度の終焉と、新たなルールの始まりを意味する。登録支援機関の要件厳格化は、ノウハウなき事業者の退場を促す。

AIの進化は、マッチングという「知的労働」の価値を急速に平準化させる。「SaaS is Dead」の波は、月額課金モデルの存在意義そのものを問い直す。

こうした変化の中で生き残るのは、「人にしかできない判断力」と「システムにしかできない効率性」を両立させ、なおかつ現場の負担を増やさない形でサービスを提供できる事業者だけだ。

変化を恐れて現状維持にしがみつくのか、それとも変化そのものを設計して次の時代を作るのか。その選択が、これからの外国人材ビジネスの明暗を分けることになるだろう。