株式会社StarBoard 代表取締役の矢部です。

先日、あるニュースを見て、思わず手を止めました。

インドネシア政府が2026年、最大50万人の「スキル人材」を海外に送り出す計画を発表した──という報道です。

「50万人」という数字のインパクトもさることながら、僕が本当に注目したのはその中身です。

これまでインドネシアからの海外就労といえば、家政婦や単純労働のイメージが強かった。しかし今回の計画では、対象を高卒以上・職業訓練修了者に限定し、送り出し先も建設、製造、介護、ITなどの「スキルが必要な分野」に集中させています。つまり、インドネシア政府は国をあげて「安い労働力の輸出国」から「スキル人材の送り出し国」へと舵を切ったのです。

この流れは、日本にとって無視できません。

厚生労働省の発表によれば、2025年10月時点で日本で働く外国人労働者は約257万人。過去最多を更新し、前年比で11.7%も増えています。特定技能制度も2026年1月に対象分野が19分野に拡大され、受入れ見込み数は123万人に引き上げられました。

数字だけ見れば、日本の門戸はこれまでにないほど開いている。

しかし、ここで見落としてはならないことがあります。

日本だけがインドネシア人材を求めているわけではない、ということです。

韓国、台湾、ヨーロッパ各国、中東諸国──世界中が少子高齢化と人手不足に直面し、インドネシアの若い人材に注目しています。インドネシア政府も、送り出し先を一国に依存せず分散させる方針を明確にしています。

言い換えれば、いま起きているのは「日本がインドネシア人を選ぶ」時代から、「インドネシア人材が日本を選ぶかどうか」の時代への転換です。

さらに、2026年4月にはインドネシアで画期的な法律が成立しました。22年越しの議論の末に可決された「家事労働者保護法」です。420万人の家事労働者に対して、休日・健康保険・年金・職業訓練の権利が法的に保障されました。国連人権高等弁務官もこの法律を称賛し、他国に追随を呼びかけています。

これはインドネシアが「労働者を送り出すだけの国」から「労働者の権利を守る国」へと変わりつつある証拠です。

Asia Timesは2026年3月の記事で、インドネシアの「人口ボーナスの窓が閉じつつある」と報じました。2030年頃には25歳未満の人口が初めて減少に転じ、生産年齢人口の割合がピークを迎える2035年までの約10年が勝負だと指摘しています。

逆に言えば、この10年間こそが、日本企業にとってインドネシア人材と最も深い関係を築けるラストチャンスかもしれません。

僕たちStarBoardがインドネシアに特化してきたのは、単に「人が多い国だから」ではありません。現地に足を運び、教育機関と直接つながり、一人ひとりの背景を理解したうえで日本企業へお繋ぎする。この地道な関係構築こそが、「選ばれる国・選ばれる企業」になるための唯一の道だと信じているからです。

「安い労働力」を求める時代は終わりました。これからは、「一緒に未来をつくるパートナー」としてインドネシア人材と向き合えるかどうか。それが、日本企業の人材戦略の分岐点になると、僕は確信しています。