最近、ヨーロッパの移民政策について調べる機会がありました。OECDの最新レポートや、IOM(国際移住機関)の世界移民報告書にも目を通したのですが、正直、他人事ではないなと感じています。
いま欧米では「反移民」の声が急速に広がっています。ドイツでは極右政党AfDが第二党に躍進し、フランスでは移民排斥を掲げる国民連合が勢力を拡大。イギリスでは2025年に難民排斥デモに10万人が参加しました。オランダでも反移民政党が第一党になっています。

でも、ここで立ち止まって考えたいんです。なぜ、こうなったのか。
答えはシンプルで、「受け入れたあとの設計」が足りなかった。OECDのレポートを読むと、それが痛いほどわかります。イギリスでは介護分野で海外人材を急拡大した結果、低賃金化とブローカー依存が蔓延しました。ドイツでは難民を受け入れたものの、統合政策が追いつかず地域摩擦が発生。フランスでは移民の子どもたちに十分な教育や就労支援を提供できず、社会の中で孤立させてしまった。その結果が暴動であり、排外主義の台頭です。
特に印象的だったのが、イギリスのNHS(国民保健サービス)の話です。NHSは税金で運営される「原則無料」の医療制度で、イギリス人にとっては国家の誇りとも言える存在です。ところが今、このNHSはインド系の医師やナイジェリア系の看護師、フィリピン系の介護士など、大量の外国人スタッフなしでは回らなくなっている。にもかかわらず、2025年にイギリス政府は介護職ビザの対象から外国人労働者を除外し、ビザ発行数はピーク時の7分の1にまで激減しました。「反移民」を掲げながら、移民なしでは医療が崩壊する。この矛盾は、まさに統合設計の失敗がもたらしたものだと思います。
IOMの世界移民報告書にも、こう書かれていました。移民は世界人口のわずか3.6%に過ぎないけれど、送出国にも受入国にも大きな経済的貢献をもたらしている。問題は「移民が来ること」ではなく、「受け入れた後の仕組み」にある、と。
翻って日本はどうか。日本はいま、欧州が20年前に立っていた場所にいると私は感じています。人手不足は深刻化し、外国人労働者は250万人を超えました。ここから先、ヨーロッパと同じ轍を踏むのか、それとも違う道を歩めるのか。その分岐点にいるんです。
私たちのようにインドネシアから人材を紹介している立場から言えば、大切なのは「何人入れたか」ではなく、「受け入れた後にどれだけ支えられるか」です。日本語教育、生活支援、キャリアパスの設計、受入企業の体制づくり、地域との橋渡し。入国前から定着までの一貫した統合支援があってはじめて、外国人材は「社会の一員」になれる。
ヨーロッパの失敗は、「受け入れること」そのものの失敗ではありません。「受け入れた後を設計しなかったこと」の失敗です。日本がその教訓を活かせるかどうか。経営者として、この問いに正面から向き合っていきたいと思っています。