今日5月20日は、インドネシアの「Hari Kebangkitan Nasional(民族覚醒の日)」です。
1908年のこの日、バタビア(現ジャカルタ)の医学校に通う20代の学生たちが、「ブディ・ウトモ」という団体を立ち上げました。インドネシア史上初の民族主義組織です。118年前のことです。
「ブディ」は「知性」、「ウトモ」は「崇高な」。つまり「崇高な知性」。教育と文化の力で民族の未来を切り拓こうとした、若者たちの志がそのまま名前になっています。
植民地支配下で、武器ではなく「学び」を武器にした若者たちがいた。このエピソードを知ったとき、私はいまインドネシアで日本語を必死に学んでいる若者たちの姿と重なって見えました。
いま、インドネシアで何が起きているか
ちょうど今日、インドネシア中央銀行(BI)が政策金利を0.25%引き上げ、5.00%にするかどうかの判断を下します。ルピアが過去最安値を更新し続ける中、市場の過半数のエコノミストが利上げを予測しています。
利上げは通貨防衛の手段ですが、同時に国内の借入コストが上がり、企業の投資意欲を冷やす。2026年1〜4月だけで15,000人以上が解雇されたインドネシアにとって、雇用情勢はさらに厳しくなる可能性があります。
こうした経済環境の中で、インドネシア政府は今年、30万〜50万人の技能人材を海外に送り出す計画を推進しています。日本、韓国、欧州、米国。送り出し先の筆頭に「日本」が挙げられていることは、私たちにとって追い風です。
日本側でも「静かな変化」が起きている
一方で、受け入れる日本側にも見逃せない変化がありました。
4月15日から、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザの申請において、対人業務を行う職種には日本語能力試験N2レベル以上の証明が原則として求められるようになりました。通訳、ホテルのフロント、接客業などが対象です。
これは「誰でも来てください」の時代が終わりつつあることを意味しています。日本は外国人材を必要としている。でも、「日本語ができる人材」をより強く求め始めた。
この変化は、インドネシア人材にとってはチャンスです。なぜなら、インドネシアの日本語学習者数は71万人で世界第2位。しかも、全寮制5カ月集中の教育機関まで作って、本気で日本語を叩き込む仕組みが動き始めている。
「学びの力で未来を切り拓く」。118年前の医学生たちと、いま日本語を学ぶ若者たちの姿勢は、驚くほど似ています。
「覚醒する」のは、受け入れる側も同じ
民族覚醒の日のテーマは、毎年インドネシア政府が定めています。今年のテーマは「Jaga Tunas Bangsa Demi Kedaulatan Negara」。「国家主権のために、国の若い芽を守ろう」という意味です。
このテーマを聞いて思うのは、「若い芽を守る」のはインドネシア側だけの話ではないということです。
日本に来てくれたインドネシアの若者たちを、私たちはちゃんと「育てて」いるだろうか。日本語を必死に覚えて、N2やN1を取って、技人国や特定技能の資格で来てくれた人たちに、「この会社で成長できる」と思ってもらえる環境を用意できているだろうか。
覚醒すべきは、受け入れる側の私たちも同じなのかもしれません。
118年前、20代の医学生たちは「教育こそが民族の未来をつくる」と信じて動き出しました。いま私たちにできるのは、海を渡ってきてくれた一人ひとりの「学びたい」「成長したい」という気持ちに、本気で応えることではないでしょうか。
StarBoard 代表取締役 矢部将勝