インドネシアの政治・経済が大きく動いています。プラボウォ政権の発足から約半年、外交・経済・治安のいずれにおいても従来のインドネシア像を覆すような動きが相次いでいます。外国人材の送出国としてだけでなく、地政学的な「戦略国家」として存在感を増すインドネシアの今を、日本の受入企業の視点から整理します。

インドネシアの地政学と経済戦略のイラスト

外交:「非同盟」から「全方位外交」へ

プラボウォ大統領は就任以来、米国・ロシア・中国のすべてとの関係強化を進めています。2026年4月には、米国との新たな防衛パートナーシップ締結と同日にプーチン大統領と会談するという異例の日程を組み、「マルチ・アライメント(多方位連携)」を鮮明にしました。

一方で、ガザ復興への国際安定化部隊8,000人規模の派遣を表明するなど、中東外交にも積極的に関与。ASEAN議長国としてはやや存在感が薄れているとの指摘もありますが、南シナ海の行動規範策定では重要な調整役を担っています。

経済:GDP5.6%成長とニッケル戦略の光と影

2026年第1四半期のGDP成長率は5.61%と3年超ぶりの高水準を記録。政府支出の前年比21.8%増という積極財政が牽引しました。

特筆すべきは、ニッケルの「資源下流化(ヒリリサシ)」戦略です。インドネシアは2020年に未加工ニッケルの輸出を全面禁止し、国内での精錬・加工を義務化。この結果、世界のニッケル生産シェアは31.5%(2020年)から60.2%(2024年)へ急拡大しました。BYDが10億ドル規模のEV工場建設を発表し、トヨタも約1.8兆円のEV生産計画を公表するなど、インドネシアはEVサプライチェーンの要となりつつあります。

ただし、ニッケル開発の急拡大は深刻な環境問題も引き起こしています。2026年2月には産業団地で鉱山廃棄物の土砂崩れが発生し死者が出ました。森林破壊、水質汚染、沿岸部の洪水リスク増大など、経済成長の代償が表面化しています。

治安:国際犯罪組織の流入という新たなリスク

2026年5月、ジャカルタでオンライン賭博の拠点が摘発され、ベトナム人・中国人を中心に321人が逮捕されました。バタム島でも210人規模の投資詐欺組織が摘発されています。ミャンマーやカンボジアから東南アジア各国へ拠点を移す国際犯罪組織がインドネシアに流入しており、治安当局は警戒を強めています。

この動きは、インドネシア国内の外国人労働者に対するイメージにも影響を及ぼしかねないリスク要因です。合法的に就労する外国人材との明確な区別を社会に示すことが、受入制度の信頼維持に不可欠です。

日本の受入企業が知っておくべきこと

これらの動向を踏まえ、インドネシア人材を受け入れる日本企業が押さえておくべきポイントを3つ挙げます。

1. インドネシアの「国力」が急速に高まっている
ニッケル・EV戦略の成功により、インドネシアは単なる「労働力の送出国」から「戦略的パートナー」へと変貌しています。人材採用においても、対等な関係構築の意識がこれまで以上に重要です。

2. 経済成長は「来日メリット」を相対的に下げる
GDP5%超の成長と国内産業の多角化が進めば、インドネシア国内の雇用機会は拡大します。「日本に来れば稼げる」という構図は今後徐々に変化していく可能性があります。

3. 犯罪報道と外国人イメージの混同に注意
国際犯罪組織の報道は、外国人全般への偏見を助長するリスクがあります。合法的に入国し真面目に働く特定技能人材との違いを、企業・地域の双方が正しく理解することが大切です。

まとめ

いまインドネシアは、かつてないスピードで国際社会におけるプレゼンスを高めています。外交では全方位外交、経済ではニッケル・EV戦略、そして治安面での新たな課題。こうした複合的な変化を理解した上で人材採用に臨むことが、持続的な外国人材活用の第一歩となります。

当社では、インドネシアの最新事情に精通したスタッフが、採用から定着までワンストップでサポートしています。お気軽にご相談ください。